| 機微 的个人资料そのひぐらし――雲に隠れ霞を食む――機微の巣窟。日志列表网络 | 帮助 |
|
2008/3/30 サイトできた。サイト出来ました。
一日20分くらいのタグ打ち、思い出すとつかれた。ビルダーが欲しかったんです><;
ブログの方は拍手返信と、最新作upに使うつもりです。
こちらもよろしくおねがいしゃーす。
2008/3/29 つながり。「なぁ、男と女って難しいよなぁ・・・。どっちかが上手くいってる時は、特によ」
「・・・。そんなの、ただの惚気ですわ」
ポツリポツリと降り始めた、雨の音に乗せて、言葉を交わした。
つながり。
ひぐらしのなく頃に/圭一・沙都子・その他/Written by kibi.
1: Keiichi
肩が重かった。
鬱々とした気分だった。
それは、何気なく見上げた、どんよりとした曇り空がかぶさってくるような、そんな圧迫感を孕んでいた。
大学を象徴する講堂を横目に眺める芝生の上で、ぼうと放心の体で座り込んでいた圭一は、大きく溜息をついてから、傍らの弁当箱に一瞥をくれる。
そして、どさりと背中から芝生の上に寝転がった。
曇天は、晴れぬ圭一の心を写しこんだような、グレイの塊だった。
大学のキャンパスは広く、それでも一年を終えた充実感で胸一杯といった様子の学生で溢れていた。
普段が休みと大差ない学生はもとより、ほぼ全ての学生にとって、解放とはイコール後期までの講義を終えた今日のことである。
課題の提出や試験日程など、今日は忘れられる。
不機嫌な雲が空を覆っていなければ、などと気にかける者も、それほどいない午後。
前原圭一は一人寝転び、仏頂面で空を見上げていた。
弁当箱の傍に置いてあった菓子パンをひょいとつまみあげて、ばりっと袋の口をあける。
生協で調達した品である。生協の安価な品にも、ありがたみ以外の感情を抱くことがなくなって久しい。
そんな事を自嘲気味に考えながら、もぐもぐとパンをかじる。
砂をかんでいるような食感だった。食欲もない。
ぎゅっと目を閉じる。
俺はここで何をしているんだろう、何をしようと思っていたんだろう。
そんなどうしようもない言葉達が、ぐるぐると脳裏を回り始める。
こみ上げてくる嘔吐感をこらえながら、何とかパンを飲み込んだ。フラフラとした眩暈さえする。
それでも体を起こして芝生の上に座りなおし、弁当箱にも手を伸ばす。
「うぇ・・・焼き肉弁当かよ・・」
かぱりと開いた弁当箱の蓋。
漂ってきた、普通なら食欲を誘うだろう香りにも、今は勘弁してくれという気持ちしか湧いてこない。
二段重ねになっているそれの下段も見る。
『お疲れ様』
薄桃色をしたサケのほぐし身で、器用にそんな言葉が書いてある。
魅音の、手作り弁当。
ふぅと再び溜息をついてから、今日で一週間連続、魅音の弁当を食べていないなと、そんな事を思った。
どさりと背中から芝生の上に落ちる。
ふと、少し前に雛見沢から届いた手紙を、思い出していた。
圭一と魅音は、東京の大学へ進学した。圭一は二年生、魅音は一年生である。
二人と同じ高校に3年間通ったレナは、九州の大学で学んでいる。こちらも一年生である。
梨花、羽入、それから―――沙都子も、部活メンバーの先輩達に触発されて同じ高校へ進学した。
初々しいセーラー服を着ていた彼女達は、あがって高校二年生になる。
母校の桜並木に囲まれて、きゃいきゃいとはしゃぐ彼女達を見たのが、ずいぶん昔のことのように感じられる。
高校三年間、付かず離れず、煮え切らない関係だった魅音と圭一は、東京へ出てからはずいぶんと親しく―――というよりは、近くで―――過ごしていた。
一年浪人して圭一と同じ大学を受け、桜散った魅音は、一時雛見沢へと引っ込んだが、しばらく園崎本家でもめたあと、上京して予備校へ通った。
さて、何処から手が回ったものか、気が付けば圭一は魅音の勉強のお目付け役として、園崎本家の用意したアパートの一室に身を移すことになったのだった。
魅音の部屋と同じ階にある部屋である。
当初はロハということもあり諸手を挙げて歓迎したこの待遇は、今、圭一の胸を塞ぐ要素の一つになっている。
何が面白くないのかも判然としないまま、圭一は何処か精彩を欠いた一日が積み重なっていく日々を送っていた。
帝都東京。
雛見沢など一飲みにしてしまいそうな巨体ではあるが―――。
「あ、前原君、またここに居たのか」
「え・・・あ、ども」
胡乱(うろん)な頭で纏まりの付かない言葉を弄くっていた圭一に、声がかかる。
寝そべっていた圭一は慌てて姿勢を正す。声をかけたのは男子学生だった。
分厚い、いわゆる牛乳瓶の底、といったメガネをかけた、しかし好青年風の男である。
鬱陶しそうに長髪を掻き揚げてから、圭一の隣に腰掛けて、メガネをキュッキュと拭きながら、話を振る。
「今日は行くのかい」
「え、っと。・・・申し訳ないっすけど、ちょっと遠慮させてください」
圭一の敬語交じりの言葉に少し嫌そうな顔をしてから、ふうんとつまらなさそうな相槌を打つ青年。
この青年から行くのかい、といわれればそれは合コンのことだとすぐに知れる。
いわゆる合同コンパ、学生の催す懇親会、ワイワイ集まって面白おかしい時を過ごそうという催しである。
メガネのレンズを、ようやく顔を覗かせた太陽の光に向けて、青年が再び口を開く。
「今日は園崎さんも来るって言ってたんだけどな」
「魅音が? んなバカな・・・。リョウさんなんか騙したりしたんじゃないっすか」
「人聞きの悪いこと言うなよ。前原君が来るといって、渋る彼女の首を縦に振らせたって所さ」
「・・・」
それを騙すというのだ、と心の中で思いながら、ですか、などといってお茶を濁した。
前回誘われたとき、いや、それを言うならまだ元気だった頃以来の誘いを断る文句はいつも、また誘ってください、だったからだ。
猫より暇だと揶揄される科類に在籍しているにもかかわらず、魅音は日々忙しそうで、どこかに遊びに行ったことなど圭一ですらほとんどない。
もやもやと胸中に浮かんできた何かに戸惑いながら、べらべらと話題を繰り出してくる1浪した同級生に話しを合わせる。
曜日の感覚があやふやで。
――――1月の末に圭一さんのところに遊びに行きます。
今日は1月の何日だろうか。
しばらくしてぽつぽつと雨が降ってきた。
圭一も青年も傘などもっていないので、お互い顔をしかめて、講堂の方へ足を向ける。
ガサガサとした芝生が何故か癪に障った。
先を歩く同級生の背中をぼんやりと見ながら、足を進めた。
その背中がふと振り返る。
「ん、前原君」
「え、なんすか」
「それ、君のじゃないのかい」
指差すのは弁当箱。
訳もわからずに狼狽してしまって、慌てて手に取った。
冷めてもおいしいのがお弁当なんだよ、そんな魅音の声が思い出されて。
ぼーっとしてるなぁ、などと言われながら、この弁当が魅音の手作りだと教えてやりたい気持ちに抗っていた。
少しその勢いを増した雨に、足を速めた。
ぱらぱらとした冷たい雨がシャツの薄い布地を通り抜けたのと同じくらいのタイミングで、大きく張り出した軒に身を置く事が出来た。
そこここに、大勢の避難民がいた。どの顔も輝いて見える。
不思議な劣等感を覚えながら、圭一は空を見上げる。
ゴロゴロと不機嫌そうに唸る雨雲が、流れる風にあわせてゆるゆると滑っていく。
灰色。
奇妙な色。
流れる白い雨。
――――雛見沢にも、雨が沢山降りましたの。
ぶるぶると頭を振る。
それを頭に載っている雨粒を振り落としたのだと思ったものか、隣で青年が嫌そうな顔をする。
それからこれ見よがしに腕時計を見やって、さてと声を吐き出した。
微かに煙草の香りがした。不思議な香りだった。
「それじゃ前原君、また」
「はい、すみません」
「何、いいんだよ」
また誘ってください、とは言わなかった。
軽く一瞥をくれてから、青年は背中を向けて何処かへ歩いていった。雨はあまり気にしない性質(たち)らしい。
再びぼうっとし始めた頭を不味いなと思いながら立ち尽くしていた。雨脚は強まりこそすれ弱まることはない。
気が付くと周囲の人たちはその数を減らしていた。
空を眺め続ける圭一に奇異の目を向ける者もいれば、どうにか傘の算段をつけようと奮闘している者もいた。
少しの恥ずかしさを感じながら、講堂の玄関口に回る。
案の定、誰の物とも知れぬ傘がかなりの数、傘立てに刺さっていた。そのうちの一つを手に取る。
白いビニール傘だった。
思わず周囲を見回してしまうが、もう誰も圭一などに目を向けてはいなかった。
ちょっと拝借、などと口に出しながら、ばんと傘を開く。
「うお、でっけぇ傘・・」
思わず一人ごちてしまう。
二人用の傘などという卦体なモノが、売っているのだろうかと首をかしげながら、雨の中に足を向けた。
ばらばらと安い傘を打ちつける雨。
一人切り取られた空間に身を置いたような気がして、
何だか心が落ち着いた。
むわっと、それほど暖められていたわけでもないだろうに、雨に誘われて立ち上る地面の香りに眉を顰めながら歩く。
雛見沢の清涼な雨が懐かしい。
ふとそんなことを思った。
赤い門が見えてくる。
その周囲を囲うように、これも赤い柵がある。
そこで待ち合わせをしている学生も多いようで、結構な数の傘が見える。
白、赤、ベージュ、黒、灰色、―――黄色。
思わず傘の端を持ち上げてしまう。
ずぶぬれで、見覚えのあるセーラー服を着た少女が、一人寒そうに立ち尽くしている。
――――みんな、楽しそうなんですのよ。
連絡をくれればよかったのに、バカ野郎、風邪をひいたらどうするんだ、どうして。
自然に小走りのような格好になった。
見違えるようにすらりと伸びた体躯。少し伸びた様子の、しかし見覚えのある髪。
何処かおどおどとした表情は、らしくない。
けど、なんだか沙都子ならそんな顔をするだろうなと思える顔で。
強く押せばぽきりと折れてしまいそうな、そんな雰囲気を纏った沙都子が、そこに立っていた。
気づいたのかパタパタと手を振って、笑顔を浮かべそうになって、無理やりおすまし顔を作る沙都子。
そんな所は全然変わっていない。
「あっ、圭一さん」
「バカお前、ずぶ濡れじゃないか」
「・・・圭一さんの持っている傘は二人用に見えます、・・・わ」
かちかちと合わない歯の根で、しかし、いつかのように生意気に。
北条沙都子は腕を組んだ。
2: Keiichi
「三日前にお手紙を出しましてよ」
「届いてねぇんだから同じだろ」
「そんなの、・・・郵便屋さんに言ってくださいませ」
遠くから眺めるとずいぶん成長したなという印象を持ったが、一つの傘に入ってしまえばそれほどでもない。
・・・そう思いたいのだろうなと、何となくそんな事を考えながら、沙都子が俺のハンカチで濡れた髪を拭くのを見ていた。
沙都子の背が伸びたといっても、それは此方もそれなりに成長しているわけで。
しかし、不意にぶつかる肩の高さに不思議な感じを抱く。
「・・・それにしても圭一さんも相変わらずでしてよ。お荷物を忘れて帰ろうとするなんて」
「む」
「それで一人暮らししてるだなんて、・・・私、信じられませんもの」
うるせぇなぁほっとけと小声で返事をしてから、荷物を置いたままにしてあった講堂に目を向ける。
しとしとと降り続く冷たい雨は、傘の中という切り取られた空間を作っただけでなく、衆目というモノも消し去ってくれた。
沙都子の着ている紺色のセーラー服が、どこか懐かしい。白いタイが眩しく目に映った。
隣の頭が揺れるたびにふわりと香る太陽の香りに、頬が緩んだ。
赤門の前で沙都子を傘の中に放り込んだ俺は、右手の弁当箱以外に何も持っていないことを指摘された。
お互いに感じたであろう微妙な違和感は、即座に始まった沙都子のお小言によって彼方へと去っていった。
懐かしい空気。
何だ、雛見沢に行かなくてもいいんじゃないか。
上の空を装って受け答えして見せるとぷんぷんと怒って肘鉄を食らわせてくる沙都子の傍で、そんな事を思った。
講堂の玄関口に着く。
「じゃあ、ちょっと待ってろ。すぐ来るから」
「あ、・・・。分かりましたわ」
一緒に行くと言いかけたのだろう。
小ぶりな唇の間から覗く、可愛らしい八重歯と、整えた感じのする眉がなんだか微笑ましい。
ぽつねんと広いキャンパスの隙間に立ち尽くす沙都子を見ながら、そう思った。
不思議と鬱々とした気分は晴れかけていた。
そう、雛見沢で愉快な時を過ごした頃には、こんな気分にはならなかったから。
そこはかとなく歴史を感じさせる講堂の中は、今は何だかあの懐かしい雛見沢分校の空気に似たものが流れている気がした。
自分の単純な気分に苦笑しながら、ノートやら筆記用具やらが押し込まれたナップザックを忘れ物置き場から取り出す。
誰が整頓しているものか、いつもながら忘れ物置き場にモノが置かれる速度に驚かされる。よほどの暇人か、それとも。
詮無いことを考えながら再び出口に向かう。
横長の枠に切り取られた雨の風景。
傘を肩に載せて、空を見上げる少女。
愁いを帯びた眼差し。
ブラブラと所在なさげに揺れる左手―――。
冷たい風に吹かれて、紺色のスカートがふわりと舞った。
どうして一人で此処に来たんだろうかと、ふと思った。
悟史が目を開けてからもう2年が経とうとしていた。そんな、時に。
――――毎日が宝石みたいで、恐くなるんですの。
ふるふると頭を振って足を踏み出す。
そんな俺に気づいて、にこっと可愛らしく笑う沙都子。
悲しくなるような空気は霧散した。
「ありまして?」
「おう。で、お前は荷物もってないけど、どうしたんだよ」
ささっと傘を差し出してくれる沙都子の頭を何気無く撫でながらそう聞く。
「駅のロッカーに置いてありましてよ。・・・くちゅんっ」
「ったく。風邪ひくぞ」
「・・・御心配かけますわね」
「いや、心配して治るなら死ぬまで心配してもいいけどよ」
「・・・少し、考え足らずでしたわ」
「先にアパート寄ってこうな。何なら荷物は俺が取ってきてやってもいいぜ」
「ありがとうございます、ですわ」
つんとそっぽを向く沙都子。
二人、雨の中を歩き出した。
埃っぽいとしか感じたことの無かったアパートまでの道行きが、雛見沢のそれに変わっていく。
雑踏は鬱蒼と茂った林に、降りくる雨は清涼なカタチに。
弁当箱をナップザックに押し込みながら、沙都子と言葉をつなげていく。
「どうだ、東京は」
「そうですわねぇ・・・何だか、人がとっても多くて、酔ってしまいましたわ」
「ふぅん。まぁ、俺も最初はそうだったからな」
「そうなんですの? ・・・皆さん足が速いですわね。どこに行くのやら」
「大したことは無い用事だろ」
「ほっほ。違いありませんわ」
10分も歩けば着くアパートがゆっくりと視界に入ってくる。ぱっと見るとお洒落なイメージがある。赤レンガの様相である。
寒さに頬を赤らめながら、それでも震える手を必死に誤魔化そうとする沙都子に、指をさして目的地を告げる。
ぱっと笑顔を浮かべて、いいですわねぇ、などとはしゃぐ様子が可笑しかった。
張り出した軒の下にようやく辿り着いて、飽かずに雨を落とし続ける空を見上げて、沙都子に声をかける。
傘立てには、何本か冷たい雨を纏った傘が立てかけてあった。そこに持っていた傘を差し込む。
「んー・・・どうする、魅音が来るまで俺の部屋にいるか」
「・・・そうですわね」
「魅音にも手紙出したんだろ?」
「出してませんわ」
「え」
「・・・そんなの、些細なことではありませんの。早くしてくださらないと本当に風邪を引いてしまいますもの」
「あ、ああ。悪い。三階だからエレベーター使ってもいいだろ・・・よっと」
がらんとしたエントランスホールを横切る。白髪の管理人がチラリと小窓の向こうから視線を投げてきた。
何だかむず痒い気がして、軽く会釈をしてエレベータの扉に向かう。
沙都子は見ていて恥ずかしくなるくらい大仰に頭を下げてから、俺の後についてくる。
普段より待たされた気がしたが、すっとその扉を開くエレベータ。
二基あるうちの左側だった。
沙都子の背中を押して先に中へ入れると、なにやら御満悦の様子である。
音も無く閉まった扉は、鏡のようになっている。
ぼーっと突っ立つ、くすんだ男と、紺のセーラー服を着てによによと笑う女の子が映っていた。
「あん? 何をニヤニヤしてんだ」
「圭一さんもレディをエスコートできる様になったんですのね」
「おう。ナイトの圭一とは俺のことだ。で、そのレディってのは何処にいるんだ」
「な・・・・・・け、圭一さん・・・・・ぐす・・」
ちょっと調子を合わせようかなと思って軽口を叩くと、沙都子が俯いて湿っぽい声を出す。
階段に右足をかけたらするっと左足の下が抜けたような気分になる。
「お、おいおい、何変な声出してんだ! な、泣くなよ?」
「知りませんもの・・・ぐす・・」
「だーっ!! さっきまで元気だったくせに!!!」
「・・・」
「ま、マジか? 本気で泣いてるのか?」
ぽーんと間の抜けた音がして、扉が開く。沙都子がするりと向こうへ逃げ出す。
慌てて追いかけようとして、
「ぐあっ」
沙都子の押したボタンによってガッと閉まった扉に額を打ち付けた。
思わずうずくまってしまう。そうやってがこんと扉に挟まれた。
扉の向こうには仁王立ちで呵呵(かか)と笑う沙都子がいる。
「をーっほっほっ!! 圭一さん、随分と弛んでませんこと?」
「こ、こいつ!! いでっ」
再びはさまれる。
これでは道化だ、体勢を立て直すとまたまた挟まれる。
沙都子の身体に手を伸ばすが、ひらりとよけられる。ふわりと紺色のスカートが揺れる。
後ろで両手を組んだ沙都子がふふんと小ばかにしたように笑う。
「いい加減にしやがれ!!」
「ほほほ。・・・やっと元気になったではありませんの」
「・・・」
「さ、お部屋に案内してくださいませんの」
「・・・こっちだ」
何となく毒気を抜かれた気がして、自分の部屋へ足を向けた。
きょろきょろと物珍しそうな視線をあちこちにさまよわせる沙都子。
瀟洒なアパートは、薄暗い廊下がエレベーターホールからまっすぐに伸びていて、瑞々しい観葉植物がさり気なく置かれている。
おんぼろだった部屋から、初めてこのアパートに移ってきた日の、なんともいえない高揚感を思い出す。
本屋で新しい本を探しているときのような、未来への明るい展望を覗かせるような。
「良いアパートではございませんの」
「そうだろ」
金は払ってないけどな、なんてことを自嘲気味に考える。
私もこんなところに住んでみたいですわ、などと浮かれきった声を出しながらとことこと沙都子がついてくる。
ちらと魅音の部屋に目を向けるが、まだ帰ってはいないようだ。
「此処が魅音の部屋な」
「同じ階にあるんですの?! は、破廉恥な・・・ふ、不潔ですわ!!」
「んなこといってる奴の方が破廉恥だろ。なんもねーよ」
「むぐ・・・」
ポケットから鍵を取り出してガチャリと穴に差し込んで、ひねる。
微かにホッとする。自分が一番落ち着ける場所だから―――。
そういえば此処の部屋に誰かを入れるのは、魅音以外では初めてだなと、そんな事を思う。
「おー、ただいま帰ったぜ。・・・沙都子、上がっていいぞ」
「か、片付けとかは良いんですの?」
「まーちょっと本が一杯だから座りにくいかもしれないけど、お湯沸かすまでそこに座ってろ」
ごそごそと壁に手を這わせて電気をつけ、靴を靴箱に放り込む。
洋室八帖k2と言う広さには、初め困惑したものだ。
何せ移ってくる以前に入っていた所は畳間とはめ殺しの窓に押入れだけ、風呂なしトイレ共同といったものだったからだ。
玄関口でなにやらわたわたしている沙都子を尻目に、お湯のスイッチを入れて、洋室にちゃぶ台をガチガチと設置する。
床の上のそこここには、堆く積もった書籍やらレポートの書き損じやらカップラーメンの箱やらが散乱している。
それらを適当に足で薙ぎ払ってスペースを確保する。ナップザックを放り投げる。
それからクローゼットを開けてYシャツとスウェットやらの着替えとタオルを取り出して。
ふと視線を玄関に転じる。
「? 何やってんだ沙都子。入らないのか」
「ええと、・・・ま、まぁ結構、思ったよりは綺麗にしているようではありませんの」
「うん?」
「ま、まぁ・・・その。・・・け、圭一さんを信用して差し上げましてよ」
「・・・お前みたいなのを取って食う気もおきねぇよ、早く中入って風呂入れ。駅のロッカーの番号と鍵」
「色々聞き捨てならないですけど、まぁ、・・くちゅんっ」
「いわんこっちゃない」
「ぐすん・・・お邪魔します、ですわ」
なにやら挙動不審な横揺れや縦揺れを起こしながら、黄色い頭がぴょこぴょこと部屋に入ってきた。
これ着ていいから、などと言って着替えを手渡し、ドライヤーのありかなど教えて、沙都子を置いて部屋を出る。
駅へ。
冷蔵庫の中に缶ビールしか入ってなかったことなんかを何となく思い出す。
ついでに何か買って来ようと思う。―――最近の夕飯は缶ビールだったぜ、なんて言ったら沙都子は、怒るだろうか。
久しぶりに笑った気がして、心が軽くなった。
3: Keiichi
「なんだかんだ言って結構買っちまったぜ・・・」
独り言をぼやきながら、くるくると傘の先を回す。
右手には買い物袋、左手には畳んだ傘。
沙都子が背負って来たのだろう可愛らしいリュックは右肩に。
すれ違いざまにチラリと投げられる視線には、もう慣れた―――つもりではあるが。
くるくると回す傘の先から雨粒が離れていく。
雨は止んでいた。
本当に久し振りに、それらしい買い物をした。
弁当や惣菜など、目移りを誘うかのように大量に多種な品揃えをしているし、弁当に飽きた頃には魅音の差し入れがあるのだから。
―――圭ちゃんあんまり美味しいって言わないね、口に合わないかな。
バカ、いつも美味しいからいちいち言ってらんねぇんだよ。弁当はたまに美味いから美味いって言うだけ。
うーん、よく分かんないや。
小首をかしげて笑う魅音を思い出した。
「俺もよくわかんねぇ」
ごろごろと未だに唸り続ける雲に急かされて足を速める。
外装を赤いレンガ造りに見せるアパートは、一人で見上げると馬鹿馬鹿しいくらい当たり前にそこにあった。
いつもの癖で尻ポケットに入っている財布を確かめる。
中に貯めるばっかりで、なかなかそれ以外の使い道が無かった財布。
たまには吐き出さないとな。
何となくそう思う。
ぱっぱと纏わり付いていた雨達を払ってから、アパートの傘立てにぶすりと傘を突き刺す。
薄ぼんやりとしたエントランスホールも、やはりいつも通り。
小窓の向こうからチラリと視線を投げてきた白髪の管理人が、変な顔をする。何となくまた会釈をする。
ちょいちょいと手招きされた。
「なんすか」
「さっきのぉ・・・あの娘さんは、誰かね。妹さんにしては似てなかったが」
面映い。むずむずした。
「昔の、いや、」
「ガールフレンド?」
ニヤニヤと笑う管理人さんのすきっ歯の隙間から、イカの足がはみ出している。
昼間っから何をしているんだろうか。全くおしゃれじゃない。
「部活の仲間です」
「ほ?」
「それじゃあ、失礼します」
「ま、」
待ちなさいとは言わせずに、くるりと背を向ける。
肘でエレベータのボタンを押す。すっと開いた扉の向こうに足を向ける。
大体予想が付いたので、その箱の中ではずっと目をつぶっていた。
ポーンと音がして、ようやっと瞼を押し上げる。
どこで下りても実は変わらない廊下が、眼前に、すっと伸びている。
魅音の部屋の前で、一度荷物を置く。
ガチャっとノブをひねって引くと、ドアはすっと開いた。溜息をつく。
魅音はぽっと抜けているところがあるので、鍵をかけ忘れたまま部屋を出ることもままある。
圭ちゃんがかけてくれるから大丈夫、などと女の子の一人暮らしにあるまじき態度であるが。
「魅音? 帰ってるのか?」
中からひょいっと顔を出すかもしれないと思って、玄関を覗き込む。
ふっと、不思議な香りがした。
なんだろうかと思いながら、声をかけ続ける。
電気もついておらず、ガスの音もしない。一度帰ってからまた外に出たのだろう。
今頃は硬い雰囲気も溶けてきた頃かな、などと思いながら、俺がいなくても魅音ははしゃげるだろうかとつまらないことを考えた。
キーホルダーから連なる魅音の部屋の合鍵で、かちりとドアを閉める。
もう一度荷物を持ち直して、自分の部屋へ向かう。
もちろん中に沙都子がいると分かっているからだろうが、何となく人の気配がして、それがこそばゆい。
手が空かないのでゴンゴンと頭を扉に打ち付ける。
「おーい、手が空いてないから開けてくれー」
「あ、圭一さんですの? 思ったより時間がかかりましたわね。お帰りなさいませ、ですわー」
かちゃりとドアが開く。
白のYシャツの裾をたくし上げてへその上辺りで結び、両袖をくるくると巻き、スウェットの腰周りを寄せてつまみ、ゴムで縛った沙都子が出てきた。
早速風呂に入ったのだろう、ふんわりとした感じを取り戻した髪が懐かしい。
ヘアバンドがないそのままの沙都子を、初めて見た。ちょっと大人っぽい感じでどぎまぎする。
恥ずかしい野郎だ、相手は高校一年生だろと思い直す。
「おう。まぁ何だその、ただいま」
「? 何ですの変な顔をして。ささ、お湯は沸かしてありましてよー! 圭一さん、お茶はパックでも買っておいた方が宜しくてよ。もうありませんもの」
「んー」
「あ、お荷物、ありがとうございました。助かりましたわ」
「んー」
ぺたぺたとはだしの音をさせながら、沙都子が部屋の奥に入っていく。
勝手知ったる、とでも言いたげな様子である。
何だか妙に恥ずかしい感じがして、自分の部屋に入った。
「おお・・!」
「さー、荷物はここにお置きあそばせ。圭一さん、おビールやカップラーメンばかりではお勉強に身が入るわけありませんわ」
「部屋が綺麗に!」
「べ、別に大した事はしてませんわ」
「いやぁ・・ありがとう」
「ま、まぁ感謝されるのは嫌な気分ではありません、わ。これに懲りたらもう少し普段から綺麗になさいませ」
「うーむ・・・」
部屋の中は見違えるように綺麗になっていた。
乱雑に積み上げられていた本は背表紙の高さごとに本棚にキチンと押し込まれ、書き損じたレポートは何処から探し出したものか、ダンボールの中にまとめられていた。
きびきびと動き回る沙都子にビニール袋を手渡してから、自分の部屋のはずなのに何故か遠慮した感じで床に座った。
どうにも落ち着かない。
ちゃぶ台の上にはほこほこと湯気を立てる湯飲みが二つ置いてあった。
「あら、圭一さん、これはお鍋の材料ではなくて?」
「そうだよ、寒い時には鍋がいいだろ。ガスコンロの傍の段ボール箱に小さい土鍋が入ってるから、それ使おうぜ」
「まぁ、そうですわね。・・・あら! いいお値段のお肉ではありませんの!」
「ふはは、タイムセールスで買ったからそうでもないぜ」
「そ、そうなんですの?」
「サバイバー圭一と呼んでくれ」
鶏肉なんかあれば小麦粉も卵も、などと俺のあずかり知らない次元でブツブツと、でも楽しそうに独り言をしゃべる沙都子。
沙都子は時間がかかったといったが、それほど時間は経っていないのに。
雛見沢のあの頃に―――戻ったような気がした。
窓は開け放たれていたが、風は冷たくもない。外なら、身震いしたほどなのに。
ぱたぱたと忙しそうに身を翻した沙都子の背中を、ぼーっと見る。
「あ・・、圭一さん」
「どうした」
「その、ちょっと言いづらいのですけど。・・・お弁当、食べてしまいましたわ」
「ん? 何だ腹減ってたのか」
「・・・ええ。ペコペコでしたもの」
「そっか」
「ええ」
沙都子があらかた材料を取り出した袋の中から、お菓子を取り出す。
我ながら渋いチョイスだ。
栗饅頭に麩菓子、おばあちゃんの家にありそうなお菓子の詰め合わせ。
食べきれなければ、魅音に横流しすればいいと、無意識のうちに考えていたようだ。
こまごまとした日用品の様なものは、後で整理すればいいと思って放っておく。
栗饅頭の入った袋を開けて一つ取り出す。
ずずっと舌が焼けるくらい熱いお茶をすする。
もぐもぐと饅頭をかじる。
「うめぇ」
「あ、圭一さん一人で何を食べてるんですの?」
「んだよ沙都子も欲しいか」
ぶーぶーと呟き始めた沙都子に近づく。
ぱこっと割った饅頭の小さいほうを、右手に持ち替える。
「沙都子」
「なんですの・・・ふわっ」
「栗饅頭」
ぱっと振り向いたその口に、饅頭を突っ込んでやる。
驚いたのだろう、赤くなった顔でもごもごと礼を言う沙都子の頭を撫でてから、再び隠居した爺様みたいなポジションに着く。
甘いお菓子、大好きだ。
しばらくぼーっとしていた。
「沙都子」
「なんですの」
「なぁ、鍋の用意って何をすることがあるんだよ、ここ来て座れよ。疲れてるんだろ」
「お出汁をとったりお皿を出したり色々やる事はありましてよ」
楽しいですもの、というどこか素っ気無い返事を受ける。
そうかよ、などと言って、窓の外に視線を転じる。
不思議な―――日常の延長。
高々数時間と言う時間に隔てられた向こう側から、思い出と時折届く手紙にしか残っていなかった少女がやってくる。
考えてみれば、魅音やレナと違って、沙都子や梨花ちゃん、羽入と過ごした時間はそれほど長くは無い。
長くは、ないのか。
ごろりと冷たい床に寝転ぶ。
「ちょっと! 圭一さん!!」
「なんぞ」
「ガスコンロみたいなのは置いてないんですの?」
「あるよあるある。よっと、そこの棚に」
「むがー! 届きませんわー」
初め、雨に濡れていた時の様なおすましは、何処かに忘れてしまったらしい。
ぷるぷると棚に右手を伸ばして悔しがる様子が微笑ましい。
後ろから近づいていって、カタンと棚の扉を開け、ガスコンロを取り出す。
ガスもどうやら残っているようだ。
右側で沙都子がぷぅと頬を膨らます。
「圭一さん、随分と背が大きくなっていませんこと?」
「お前が小さいだけだ」
「いいえ、にーにー、ええと・・・! 兄より大分大きくてございますわ」
「そっかよ」
「ええ、少し、驚きましたわ」
再び俯いてトントンと包丁で野菜の下ごしらえを続ける沙都子。
ちゃぶ台の上においてくださいませ、などという差配を受けてそのようにする。
考えてみれば、沙都子に料理を―――鍋が料理かという異論はあろうが―――作ってもらうのは初めてな筈である。
しかし、自分が、思った以上にその空気に馴染んでいることを自覚する。
俺は、いや、沙都子はどうなんだろうか。
もぐもぐと甘い饅頭をほおばりながらそんな事を思う。
しばらく、沙都子のたてる音だけが部屋を満たしていた。
「さー、圭一さん、後はぐつぐつするだけですわ」
「おお・・!」
重い土鍋をよろよろと運ぼうとする沙都子から、鍋を受けとり、ちゃぶ台の上に展開したガスコンロの火にかける。
出汁をとったと言っていたが、特に変わった匂いがするわけでもない。
嬉々とした様子で、皿に綺麗に盛り付けられた野菜やら肉やらを運んでくる沙都子。
腕のふるい甲斐がない、などと言って叱られるかとちょっとだけ思っていたけれど、そんなのは杞憂だったようだ。
箸は辛うじて二膳しかない。気にするかなと思って沙都子に声をかけてみる。
「おー沙都子、取る用の箸はないけど、魅音の部屋から持ってくるか」
「レディの部屋に勝手に入ってはいけませんわ!」
「んなこといったって・・いいのか?」
「圭一さんが良いのであれば構いませんわ。まさかねぶり箸なんて癖はございませんでしょう?」
「ねーよ」
「ではいいではありませんの」
あっさりとした受け答えに正直此方の方が赤面する。
いかんいかんと首を振る。
さっさと野菜を鍋の中に放り込み始めた沙都子。本当に嬉しそうに、満面の笑みを浮かべている。
可愛いなぁと思いながら、ごそごそと食べる仕度を整える。
二人、小さなちゃぶ台を挟んで向かい合う。
沙都子が自然な仕草で手を合わせる。久しく食事の挨拶などしたことが無かったので若干ばつが悪くなる。
「それでは頂きましょう」
「頂きますっと」
「召し上がれ、ですわ」
さっそく肉の塊を鍋に落とそうとすると、ぴしり! と箸で手の甲を打たれる。
「なんだよ、肉は鍋の花だろうが」
「順序と言うものがありますわ」
「口に入っちまえば同じだろ」
「いいえ、出来るだけ美味しく頂くのが宜しいとは思いませんの」
つんつんとしていた少女は、すっかり口やかましい鍋奉行に変身してしまった。
でも、何故か―――こんな状況は初めてなはずなのに、懐かしいという気がした。
軽い気持ちで、沙都子にその話を振ってみる。
「なー沙都子、何だかこういう風にしてるのって懐かしくないか」
ぴたっと沙都子の手が止まる。少し、その唇が歪んだように見えた。
その表情に、雨の中、立ち尽くしていた沙都子を思い出す。
こわばった顔をして、沙都子が顔を向けてきた。
「懐かしい筈はありませんわ。こういう風に、圭一さんと二人でお食事を頂くのは初めてですもの」
「ま、まぁそりゃそうだけど、」
「あまり―――あまりそういうことは言わないで欲しいですわ」
「・・・悪い」
「あっ、いいえ、気にしないでくださいませ」
ぱたぱたと、取り繕うように沙都子が手を振る。
それに合わせてさっきの言葉を忘れようと努める。
圭一さんも、そうなんですの、と。
小さな唇は、文脈上ではすっきりするのに、その顔を見ていると『何が』俺もなのか分からないような言葉を呟いた。
ぶんぶんと頭を振る。
この空気が嫌いでは無いから、まだ優しい時間にいたいから。
すぐに忘れることにした。
ぐつぐつと沸騰し始める鍋の中身。ゴクリと唾を飲み込んでしまう。
「さ、沙都子。その、なんとも言いづらいんだが、そろそろ肉を入れてもいいか・・・?」
「え、ぁ、・・・。まったく! 男の人はこれだから。別に逃げるわけでもありませんわ。もう少しお野菜を召し上がりなさいませ!」
ぷんぷんと怒ったフリをしながら、さり気なく肉を鍋に投下する沙都子。
そっと手を伸ばして頭を撫でる。
はにかんだような顔をして邪魔ですわ、などという鍋奉行の差配で、食事は進んでいく。
「おお、やっぱり水炊きとは違うなぁ・・・」
「そうでございましょうとも! 美味しいと言って貰えると嬉しいですわー」
「沙都子も食えよ、ほら、ほらほらほら!!」
「こんにゃくとお野菜ばかり押し込まないでくださいまし!!」
「ふははは! ハブヮッ!? 舌噛んだ!!」
「・・・自業自得ですわ」
高いだけあって味もそれなりの肉をごそっと取ると、呆れ顔で見られる。
生存本能というか、なんと言うか。
男だけの寄せ鍋を経験したことがあると、どうしても肉の確保が大事だと思いこまされる。
実家で鍋なんかやると、親父と俺の熱すぎる激闘が(大抵お袋の箸で二人とも手の甲が真っ赤になる)始まるのだから、これはもう仕方がない。
一種の刷り込みだ。
機を見て具を投下し、それはもう少しお待ちあそばせ、などと声をかける沙都子と、ええい食わせろと反抗する俺。
ふと、周りから見たらどういう風に見えるのかと、思った。
ようやく人心地ついてから、沙都子を見やると、別に肉に固執しているわけでもなく、バランスよく食べている。
自分の肉だらけの茶碗を見て少し恥ずかしくなる。
ひょいと大き目の肉を抓んで沙都子に突き出す。
「おー沙都子、俺の肉少し貰うか」
「な、何ですの急に。気味が悪いですわね。まだ煮足りないんですの?」
「いや、美味いから。ほら口開けろ」
「え? ふわっ」
「どうだ?」
「・・・・ま、まぁ、美味しゅうございますわ」
そっぽを向く鍋奉行。
もぐもぐと肉を噛む二人。
正座をしている沙都子が何だかやけに馴染んで見えた。
三人分のつもりで材料を調達したが、どうやら二人でぺろりと食べきれてしまいそうだ。
寒かった事などとうの昔の事のように、俺だけでなく沙都子も汗をかいていた。
ちょっとした雰囲気の違いで、生意気にも見えれば可愛らしくも見え、甲斐甲斐しくも見える沙都子。
こんな妹がいれば、毎日が退屈しないだろうと思えた。
少し、悟史にもやもやとした気持ちを抱く。
段々と中に入ってる食材が煮汁の下に沈んでいき、沙都子が片付けもちょこちょことはじめる。
「どうだ、あったまったか?」
「ええ! 圭一さんのお気遣いに感謝しましてよ」
沙都子は、さらりと左手でおでこを一拭きして、最後の糸こんにゃくをつるっとその口に放り込んだ。
負けじと葉野菜を茶碗に放り込むと、どうやら試合終了のようである。
時計を見上げると、30分くらいの食事だったようだ。
大して懐かしい話もしていないことに気づき、少し残念に思った。
しかし、まだ時間はある。
自分の使った茶碗を流しに持って行こうとして腰を上げる。
すると間髪いれずに沙都子の叱責が飛ぶ。
「圭一さんは座っていてくださいませ。お茶がまだありますわ」
「い、いや、自分で使ったものくらいは自分で、とお袋にきつく言いつかってるんだ」
「いいからお座りあそばせ。男の人は一番近くにいる女の人のお達しを聞くものでしてよ」
「そ、そうなのか?」
「そうなんですの!」
さっと箸と茶碗を奪い取られる。
てててと流しに洗い物を運ぶその後姿を見て、やれやれと溜息をつく。
窓の向こう側から忍び込んできた風が、そっと頬を撫でる。
先程よりは幾分か冷たさが増したように感じた。また雨が、降るのかも知れない。
講堂から勝手に持ってきてしまった傘を、いつ返そうかなとそんな事を考える。
今はもう冷めてしまったお茶に手を伸ばす。
湯気を吐き出すことも止めてしまったお茶の温さは、しかし、何処か優しいものだった。
腹は十分満たされたのに、つい饅頭に手を伸ばしてしまう。まぁいいだろと自堕落なことを考えながらデザートを抓む。
パタパタと、食後にも拘らず、忙しく台所を行き来する沙都子。
水を得た魚のような、いや、どちらかと言えば釣り上げられた魚のような忙しさ。
しかしテキパキとメリハリがついている。
多分家―――、実家でも、そうしているのだろう。すると悟史も、今の俺のように苦笑しながらその後姿を見ているのだろうか。
つまらないことを考えながら、ひょこひょこと動く頭を眺めていた。
後ろから見ると、自分がくたびれた分の時間は過ぎたのだなと思わされた。
やはり雛見沢での生活が美化されて記憶されているように感じるくらいには、色々あったのだ。
しかし色々と括ってみた途端に、何があったのかよく分からなくなる。
一言疲れているのだと呟けない自分が少し嫌だった。
それにしても、あれだけ―――というのはかなり癪だが―――べったりだった悟史から離れて東京くんだりまで出てくるとはどういうことだろうか。
沙都子から届いた手紙を思い返す。
几帳面そうな字体に、隠しきれない丸っこさが沙都子らしくて。
微に入り細を穿って近況を報告してくる月を跨ぐ手紙。いつからかそれを待つようになっていた。
或いは。
自分の、何をしているのか分からない日常からの逃避だったろうか。
――――皆さん、お元気ですわ。
そうか、と、何となく腑に落ちた。
沙都子自身がどうだとは書かれていなかったのかも知れない。
それは、悲しいことのように思えた。でもそれは雨の中に立っていた沙都子のことで。
今此処で忙しそうに、でも楽しそうに後片付けをしている少女とは重ならない。
つるりとハンドタオルでおでこを拭きながら、沙都子が台所から此方に近づいてきた。
「さ、圭一さん、片付けは終わりましたわ。お茶のお代わりをお持ちしましてよ」
「ん、おお、ありがとう」
「湯飲みをテーブルの上にお置きあそばせ」
「ふいふい」
とぽとぽと、なんとも和ませてくれる音をたてながら、安物のお茶が生意気にも美味しそうに淹れられる。
ほうと知らずの内に溜息を吐いてしまう。こうやって年を取るのかと爺くさいことを考えたり。
何処となく充実感を漂わせる顔で、沙都子も正面に陣取った。
その尻に先程放ってあったビニール袋が少し敷かれる。
もう、きちんと片付けてお置きあそばせ、などと言って今度はその袋の中身をテーブルの上に出しながら小言を呟く。
時折窓の向こうから流れてくる風に、沙都子のさらりとした髪が絡まる。
得難い時間にいるのは、俺だけなのだろうか。
「歯ブラシに、歯磨き粉に、・・・圭一さん、歯磨き粉はきちんとうがいをして使ってますの?」
「ん? ああ、まぁ・・・でもたまに味が残ったりしてるよな」
「それではかえって虫歯になりましてよ」
「マジ?」
「本当ですわ。お気をつけたほうが宜しくてよ。・・・ティッシュ、ボールペン、石鹸・・・何だか旅行へでも行くような物ばかりですわね」
「旅行、か」
雛見沢分校の卒業旅行で、沖縄へ行ったことを思い出す。
さすがに男一人に女の子一人の旅行なんて事はなく、
かといって引率に知恵先生がつくのも面白くなく、気が付けば部活メンバー全員と詩音、引率に葛西さんというメンバー構成だった。
南国で過ごした短い時間も、今思い返せば金色をしている。
ふと胸が締め付けられるような懐かしさを感じた。
何も、本当に何も恐くは無かったし、もちろん毎日が楽しかった。
そんな事を考えている俺の顔をチラリと見やって、沙都子は買い物の整理を続ける。
「髭剃りの替えに・・・あら」
「ん、どうした」
「・・・圭一さん、お煙草なんかお飲みになりますの?」
「あ、いや」
今の今まで買った事など忘れていた。
沙都子の顔が何とも形容しがたいものに変わる。少し慌てる。
「い、いや、その、なんと言うか、・・・落ち着きたい時にちょっとな、」
「百害あって一利なしといいますけれど」
「そんなに吸ってるわけじゃねぇよ」
「別に責めてるわけじゃありませんわ。圭一さんもお年の上ではもう大人ですもの。分別もありましょうし、それをとやかくは言いませんわ」
それはそんな顔で言わないで欲しい、などと口に出来るわけでもなく。
実際一月に一箱吸いきるか吸いきらないか、いや、今月は三箱目、だったか。
「悪い、お前がいる前では絶対に吸わないよ」
「・・・圭一さんのお体に悪いんですの」
ふんとつまらなさそうに鼻を鳴らして、沙都子がちゃぶ台の上に煙草のパッケージを放り出す。
ふ、と。鼻先を掠める香り。
本当に匂いがした訳ではない、けれど。
「あ、―――」
「どうかしまして?」
「煙草だ」
「? ですから、これは煙草でございましてよ」
「いや、魅音の部屋でかいだ、匂い」
沙都子がぽかんとした顔をする。
「ええと、話がよく分かりませんわ。魅音さんも煙草を?」
「いや、俺の同級生の煙草の匂いが」
「魅音さんの部屋で? ・・・気のせいではございませんの」
さぁさぁと、雨の落ちる音が窓の向こうから伸びてきた。それは俺の耳を捉える。
温まった筈の身体は段々と冷えていく。
何か言わないといけない気がして。
「まぁ、魅音は俺よか充実してるってことだな」
「・・・あんまりではございませんの」
沙都子の顔は、魅音ではなく俺があんまりだと言っていた。
違うのかも分からない。しばらく沈黙が続いた。
沙都子は何も無かったかのように作業を続ける。
パタリ、パタリ。
唯一放り投げられた煙草の箱を立てては倒す。
はぁ、と溜息をついたのは俺だったか沙都子だったか。
「なぁ、男と女って難しいよなぁ・・・。どっちかが上手くいってる時は、特によ」
「・・・。そんなの、ただの惚気ですわ」
ポツリポツリと降り始めた、雨の音に乗せて、言葉を交わした。 しんとした空気が満ちるのが何故か恐くて。
「な、沙都子」
「なんですの」
「ちょっと遠出しようぜ」
少しの間沈黙が身を起こして部屋を包んだ。響くのは雨の音だけ。
自分が本気かどうかは分からなかったけれど。
「・・・いいですわね」
そっと面を上げた沙都子の笑顔で、足を伸ばすのもいいかもしれないと思った。
―――――――――――
「御迷惑をおかけしますわね」
「いや、たまにはいいだろ、こういうのも」
「そう―――なんですの?」
「ああ」
何処か懐かしい畳の香りに、目を細めた。窓の外では大きな夕陽が海に沈もうとしていた。
4: Keiichi
「それで、圭一さん、何処に連れて行ってくださるんですの?」
「ん、ああ、まぁな」
適当にお茶を濁しながら、駅のホームを歩く。吐く息は白い。
沙都子は、それでも深く追及することなく、弾むような足取りで隣を歩く。
ライトイエローの温かそうなカーディガンが、不思議なくらい似合っていた。
沙都子は小さな手提げを一つ、圭一はリュックを一つ。
駅までの道。
雑踏の中にあって、一本の傘に切り取られた狭い空間が嫌いではなかった。
他愛無く繋がるお喋り。
手紙で受け取る印象とはちょっと違う少女。
雛見沢とは違い、鬱塞と、愚鈍に暮れてゆく倦みきった都会の一日。
そんな時を歩いた。
取り敢えず新幹線に乗ろうと思って、名古屋へ向かう新幹線に乗り換える為の駅までの切符を買う。
ちょっと驚いたような顔をした沙都子だったが、特に何も言わずに切符を受け取る。
お金は自分で払いますわ、などと一悶着あるかと思ったけれど、それもない。
二人でぽつねんとホームに立つ。ざわざわと普段は鬱陶しく感じる周囲も今日は気にならない。
雨に濡れた傘で適当にタイルをつつく。
ホームに滑り込んできた電車に、あれではございませんの、などと不安そうな顔をして俺のコートの袖を引く沙都子。
そんな仕草を可愛らしく思いながら、そっと頭を撫でる。
「違うよ。心配すんな、ちゃんとエスコートしてやるから」
「むぐ・・・。結構、根に持つタイプなんですのね」
「? 何が」
「・・・何でもありませんわ」
「なんだよ、いてっ」
「鈍感男」
こつんと茶色のローファーのつま先ですねを蹴られる。
つんとそっぽを向きながらも、不安なのだろう、俺のコートの左肘を掴んだ手は離れない。
暫くすると、お決まりの白線の内側へお下がりください、というアナウンスが流れる。
「このアナウンスも不思議でございましてよ」
「なんで」
「下がらない方も、いらっしゃるんですの」
「まぁ親切でやってるんだろ」
「それなら横断歩道でも右足から出して左足を次に、と言えばいいんですわ」
「ひねくれすぎ」
「圭一さんほどではありませんもの」
「む」
ほほほと笑う沙都子を睨みながら、止まった車両に注意を向ける。
微妙な時間帯にも拘らず、下りる人が多かった。
その人数に目を白黒させている沙都子の手を引いて、車両に乗り込む。
ちょうどいい具合に正面の席が空いていたので、そこに腰掛ける。
沙都子は何故か紺のスカートをしきりに気にしながら、ちょこんと俺の左隣に座った。
静かなのに何処かざわざわとした雰囲気に包まれる車両の中。
沙都子はお澄ましして座っている。
「もうちょっと力抜けよ」
「い、いえ、田舎者だと思われたくありませんもの」
「それ考えた時点で田舎者な」
「こほん。まぁ、そうですわね」
俺たちのやり取りを聞いて、右隣のおばさんがくすりと笑った。
かたん、かたんと。
ゆっくりと電車が動き始める。
背負っていたリュックから、小説を取り出して読み始める。
それを見て何処か不満そうな顔をして、沙都子も手提げから本を取り出して読み始めた。
チラリと見ると物理の教科書だった。
「お前なぁ・・・」
「なんですの。圭一さんが放っておくからですわ」
「さすがにそれは無いだろ」
「圭一さんのお下がりですもの。二年生になったら始まりますわ。予習ですのよ」
「・・・」
ぴらっと裏表紙を見ると、確かに前原圭一と書かれていた。
何となく赤面しながら、小説の世界に没頭しようとする。
自分の使っている洗剤とは異なる芳香が、意識の集中を妨げる。
窓の外に視線を転じた。
雨に煙る窓の外の風景が、霏々(ひひ)と連なる雛見沢の林に見える。
遠くに傾くビルの影は、その真下から見上げた時の圧迫感を滑稽に感じさせるほどに、脆く目に映った。
安穏とした空気。
そっと息を吐いた。
するすると滑り出した車両の振動が酷く心地よい。
乗車と下車との間から繋がっていたワサワサとした空気がようやく落ち着き始める。
弛緩した空気に包まれる車内。
マナーを違反するなど考えもしません、といった白けた空気と、窓の外の冷気がガラス戸を隔てて交わる。
さぁと窓ガラスを叩く雨の音に耳を澄ませていた。
何となく小説の続きが頭に入ってこないのに気づいたのは、2つほど駅を過ぎた頃だった。
窓外は夕の赤さを通り越し、そろそろ夜の暗さを纏い始めている。
左の沙都子をそっと見ると、難しそうな顔をしながら、手提げから取り出したボールペンを使って教科書と格闘している。
しばらく横目で様子を伺っていると、こっくりこっくりと舟をこぎ始める。
ぷるぷると頭を振って教科書に向き合うが、しばらくするとまたこっくり。
そんな様子を苦笑して見やりながら、右手でその頭を左の肩に載せる。
「あ、その」
「いいよ、疲れてるだろ。寝てろ。着いたら起こす」
「・・・ありがとうございます、ですわ・・・」
そっと小さくあくびをかみ殺してから、沙都子の頭が左肩にもたれかかって来た。
不思議と落ち着くと思ったら、自分と同じシャンプーの香りがするからだった。
むずむずとした感じを覚えながら、今度こそ小説の世界に入り込む。
行き先は――――。
5: Keiichi
「ず、随分と暗いですわねぇ・・・」
「そうだな」
盲腸線の果てにある駅の出入り口から、テクテクと二人して歩いてくる。
周囲は既に薄暗く、流れる風は、夕から夜へと移っていく。月の光に道路が濡れている。
閑散としたホームをチラリと振り返ってから、沙都子が不安げに圭一のコートの袖を引いた。
そんな沙都子の髪をぐしゃぐしゃと撫でてから、圭一は寂れた駅前のロータリーを見渡す。
中心にぼんやりと立っているのは大きな時計塔である。それを囲うように安っぽい花壇がある。
観光が産業としてあるのだろうか、そこここにのぼりの様な布がはためいているが、何と書いてあるのかは暗くて判然としない。
タクシー乗り場にもタクシーなど見えない。
しかし、月に照らされた街路に、何処か胸を弾ませるものを感じ取っていた。
内心ではちょっと不味いと思っていた圭一だが、そんな事はおくびにも出さない。
広島でローカル線に乗り換え、いつの間にか沙都子と共に寝てしまい、気づいたところで着いた駅で降りたのだった。
冬の冷たい風に、潮の香りが混ざり合っている。海が、近いのだ。
さわさわと左隣に立っている沙都子の髪を揺らす風。
きんと冷える空気を肺の底まで吸い込んで、吐き出す。
なんとも新鮮な気持ちになった。
ついと顔を上げた沙都子に目を向ける。
「圭一さん」
「どうした」
「腕を、組んでも構いませんの?」
「おう」
寒くてやり切れませんわ、と、小さく呟いてから、沙都子が華奢な腕を絡ませてくる。
不思議な温かさを、服に隔てられて、それでも感じた。
途中でお金を下ろしてきたので、懐は心配ない。
何処かホテルのような宿泊施設は無いだろうかと、そんな事を考えながらブラブラと歩き始めた。
そそと沙都子もつられた様に歩き出す。
ロータリーをくるりと回りこんで、商店街らしき雑然とした通りに足を向ける。
商店街の入り口の上に掲げられたアーチに、町の名前に連ねて銀座という名称が振られている。
何でも銀座とつければいいものでは無いだろと苦笑しながら、沙都子と歩く。
先程鼻腔を掠めた潮の香りは、風の吹き加減によるものらしく、今は消えている。
チカチカと瀕死の電灯に照らされた地図らしきものが、道の傍の掲示板に掲げられていた。
そこに近づく。
『⊂』の集合記号の形で表される地形のよう。沙都子がそういう。
俺たちが今いるのは、下端で、西の方に進めば漁港に混じって微かに宿泊施設の記号が散見できた。
「沙都子、民宿みたいなのでもいいか」
「ええ、むしろその方がいいですわ。あまりお泊りなんてした事はありませんもの。楽しみですわ」
不思議と、帰るとかこんな遠くまでとか、そんな事は一言も言わない隣の少女。
どちらかと言えばはしゃいでいるようにすら見える。眠って元気が出たことも関係があるのだろうか。
ぎゅっと組んでいた腕を強く抱かれた。少しふらつく。
「圭一さん」
「ん」
「どうして私を誘ってくださったんですの」
「うーん。そうだなぁ・・・。沙都子が何処か行きたそうだったから」
「・・・ふぅん」
さらりと月光に映える髪を揺らしながら、隣を歩く沙都子。
頭上を覆う電線の落とす影と、蒼く冷たい月の光が街路に―――路面に重なって、幻想的な紋様を描く。
その一つ一つを通り過ぎながら、シャッターの閉まった店が連なる商店街を歩く。
何処からか、チリ、という風鈴のそれに似た音が響いた。
本当に閑静な、自然に囲まれた雛見沢とはまた違った意味で、田舎な町のようだ。
道すがら、目に入った一つのコンビニと、渋い雰囲気の漂う喫茶店くらいしか印象に残る建物は無かったはずなのに。
すぅと眼前に伸びる道が、間違いなく目的地へ向かっていることを告げる。
何気なく腕時計に目をやると、もうすぐ20時になろうとしているところだった。
中天に上りかける月をぼんやりと眺める。
ヘアピンカーブが見えてくる。きっとここを曲がれば、高みから湾が一望できるのだろう。
連綿と続いていた商店街から切れて、まばらな木立を抜けて、周囲が鬱蒼とした防砂林に囲まれる。
すらりと伸びた木々に月が飲まれ、ゆっくりと濃さを増す夜の闇が、もう一つ暗くなる。
ぎゅっと沙都子が腕にしがみついてくる。
静かな―――静かな夜だった。
ほぼ直角といっていいカーブを曲がりきる。
すうと沙都子が息を呑んだ音が聞こえた。
視界が開ける。
月が、丸く白い月が、暗い海を照らしている。
太陰に世界を照らしきる力は無い。
けれど柔らかなその光は、もう一つの世界を美麗に染め上げる。
眼前に広がる景色。
遠く広がる海からそっと潮風が届く。沙都子の髪が揺れる。
「橋」
「ああ―――橋だな」
海と空とを分かつように、白く巨大な橋がかかっている。
そっと沙都子が腕を解く。ついと一歩前へ出て。
「いいところ、ですわ」
そう囁いた。
視線を下げると、係留された小船や漁船の一団が、小さく見える。
銀の月光に照らされて黒々と重なる投網―――、だろうか、そんな影も見える。
幾つかの民宿のような体裁の家屋も散見できる。
ふぅと一つ息をついて、沙都子の華奢な小さい手を引いた。
柔らかい抵抗を感じた。
「沙都子?」
「圭一さん、誘っていただいて、ありがとうございます、ですわ」
語尾が微かに震える声で、しかし、しっかりと顔を上げて。
にっと沙都子が笑った。さらりとした髪に手を載せる。
するりと、指に髪が絡んだ。
「宿、行こうぜ」
「ええ」
再び腕を組んでくる少女と共に、坂を下り始めた。
銀の月が照らす道を。
6: Keiichi
黒い水面を渡ってくる潮風が、冷えた大気の壁を縫って、どこか優しい暖かさを届ける。
舗装が途中で切れ、細かな砂利が敷かれ始めた坂道をゆっくりと歩く。
さすがに他にもっと大きな道があるのだろう、海風に吹かれる左側の斜面を何となく見上げながら、圭一はそんな事を思った。
波の音に混じって、さわさわと揺れる葉擦れの音を聞いた。
ほっそりとした腕を絡めている沙都子は、何か遊びに興じてでもいるような足取りである。軽やかな。
しかし、歩数を数えているのか、その顔は俯いている。
そっと沙都子の声が耳に届く。
「今の時期、み、み」
「民宿」
「それですわ。こほん。・・・分かっていましてよ」
「へいへい」
「もうっ。それで、民宿って、今の時期にも空いてますの?」
「さぁ」
「さぁ、って」
無理ならどっかに泊めてもらおうと、そう言う。
雛見沢なら―――泊めてもらえるだろうから。
根拠は無いけれど、ただの田舎にしか見えないけれど、ここに辿り着いたのは偶然なのだけれど。
頼りないですわね、などと呟いた沙都子がどこか楽しそうに見えた。
坂を下りきって、海辺の町に辿り着く。
ポツリポツリと民家の明かりが灯っている。
左右に伸びる土塀の隙間から、ぽうと夜の闇に浮かぶ綺麗な色が漏れてくる。
高い岩壁と、深く切り込んでくる海に囲まれた静かな箱庭。
閑寂な雰囲気にそんな事を思った。
ひんやりと冷えた外気と白く曇る吐息。
沙都子と二人で歩き出す。
しばらく歩くと、ポツリと立つ外灯の明かりに照らされて、電柱に張られた薄く色が抜けた張り紙が見える。
興味津々にその紙を眺める沙都子の腕を、ぐいと引く。
しかし沙都子は、逆に腕にしがみついてきた。
「圭一さん、ここにしましょう」
「ん」
ちらりと沙都子が指差す張り紙を見る。
『岸辺荘。直進。素泊まり、食事応相談。一泊2千円から』
「んー・・・。なぁ、思ったけど」
「なんですの」
「一部屋でいいのか」
「別に・・・。圭一さんは兄のようなものですもの。仕方がありませんから、信用して差し上げますわ」
「・・・二部屋な。金は俺が出すから」
「何を―――」
ぴんとおでこを指で弾いてから、歩き出す。げしげしと左足をけりつけながら沙都子もついてくる。
夜を開く外灯の明かりが、ひどく目に沁みる。
ぺたぺた、じゃりじゃりと、二人の足音が跳ね返って重なり合って、箱庭の中を満たす。
「あ、あれではありませんの」
しばらく足音と影と、歩きながらの追いかけっこをして、沙都子が前を指差すのを見る。
夜の闇に黒々と―――、しかし、思ったよりも小さな民宿が建っている。
間違っても旅館ではない。二階建ての家屋。
ぱっと見た感じだと、二階が貸間になっているようだ。バルコニーが二つ。
左右に連なっていた土塀が、T字路に合わせて左右に分かれていく。
辿ってきた道の正面に、岸辺荘だろう民宿を認める。
「すげ」
感嘆はむしろ、それが民宿として機能している事を知ったのが原因だっただろう。
その家に近づくと、何気なく見上げていた看板らしきものが、実際に看板だという事に気づかされる。
その看板には、上手いのか下手なのか判然としない筆書きで、『岸辺荘』と書かれていた。
雨風に晒されて、塩がへばりついて、それでも板としての体裁を保っている事がむしろ凄いのだろうか。
チラリと右隣を見ると、月光の輪を頭に載せた沙都子と目が合った。
「早く中に入りませんの」
ここでいいのか、などと。要らない心配だったのかもしれない。
ゆっくりと髪を撫でて、玄関へと向かう。
古びたスライド式の黒い玄関。
何に使うのだろうか、玄関口から連なる壁に木の板が打ち付けられている。
きしんだ音がしそうだなと思いながら、手をかける。
と、
「あら」
「お?」
「・・・・」
そろりと予想に反して音など立てずに開いた扉の向こう―――というよりは、下半分に、まだ幼さを残す女の子が立っていた。
おかっぱに切り揃えられた黒髪を、頭の左側に赤いリボンできゅっと結び、ピンク色のTシャツを纏い、白いスカートをはいた、可愛らしい出で立ち。
どうやら、この子にとっても今の状況は予想外のものらしく、大きく目を見開いて、ぎゅっと扉にしがみついた。
「あの、今晩は」
出来るだけにこやかに挨拶してみたが、明らかに扉にしがみつく必死度が増した。
まだぷくぷくとした小さな指が、白くなるほど。
「圭一さんはおどきあそばせっ。・・・たいがい、不気味なんですわ」
「なにをっ・・いてっ」
べしっと尻を叩かれて、沙都子に押されてよろける。
「今晩は、ですわ。・・・ええ、私たちは、ここにお泊りしようと思って来たんですの」
「・・・おきゃ、くさん」
微かにホッとした顔をしながら―――しかしまだ、何処かびくびくした様子で、女の子はしゃがんで目線を合わせた沙都子に向かって口を開いた。
しゃがみこんで膝頭に両手を揃えた沙都子の、顔は見えなかったけれど。
酷く優しいその声に、ちょっと驚いた。
「あ・・・。こ、こんばんはっ」
「あら、きちんと挨拶できるんですのね、偉いですわ」
そっと、夜目にも白い沙都子の手が伸びて、女の子の頭をふわふわと撫でた。
おどおどと上目遣いをする女の子―――。
不覚にも姉妹、なんて言葉が浮かんでしまった。そんな事を言うと怒られるのだろうけれど。
そんな空気をすり抜けて、どたどたとなんとも勇ましい足音が扉の向こうから聞こえて来る。
沙都子はそのままの姿勢で、圭一は少し服装を整えて。
「あらあら、今晩は! こんな時間に。お泊りですか?」
恰幅のいい、いかにも客商売のおっかさんといった感じの人が扉を開けた。
先程の女の子はぱっと走りよって、そのおばさんの足にしがみついた。
「あ、」
「どうも、今晩は。あの、部屋は空いてますかね」
「部屋は、空いてない事も無いけどねぇ・・・」
じろじろと圭一と沙都子を眺め回すおばさん。
黒いコートの圭一と。
ライトイエローのカーディガンを、紺の制服の上に纏った沙都子と。
もぞもぞと沙都子が、校章の見えるネクタイの結び目をカーディガンの中に押し込んだ。
それを目ざとく見つけたおばさんを見て、圭一が口を開く。
「実はその、広島の方に実家があるんですけどね。法事で寄った帰りなんですけど」
「そう」
「乗換えを間違った上に、二人して寝てしまって」
そういう圭一の隣で、ふわりと沙都子が頭を下げる。
しばらく値踏みするような視線を散らせていたおばさんの顔が、ようやく緩む。
「それでお泊りはどのくらい?」
「あっと。一泊で。いいだろ、沙都子」
「え、ええ。よろしくお願いします」
「まぁまぁ! 礼儀正しい妹さんだわね。お部屋は一つでいいかしらねぇ?」
「出来れば別々の方が、」
「もう、お金が倍ですわ」
「んな事いったって・・・」
「申し訳ないですけどねぇ、うちは二部屋しかないんですよ。そのうちの一つが畳を上げたばっかりで」
がはがはと笑うおばさんの顔を見て呆れる。
見た目通り、とても手広く商売をしているという感じではない様だ。
「それじゃ、一部屋で。あの、寝具とかはどうなりますか」
「あぁあぁ。どうしますお客さん、先にお風呂でも。もしそうなら部屋に運び込んでおくから」
「分かりました、よろしくお願いします」
「随分と礼儀正しい兄妹だねぇ。それじゃあ、宿帳に色々書いてもらおうかね」
「はい。ほら、沙都子」
「この子は」
「え?」
「お名前は、なんと言うんでしょう、か」
先程の余裕たっぷりな様子は消えて、消え入るような小さな声を出して、沙都子が女の子を手で示した。
おばさんは破顔して、パタパタと手を振りながら沙都子に向き直る。
それから少女の背中を押しながら噛んで含めるように声をかける。
「ほら、美由紀、挨拶しなさいな」
「きしべ、みゆき、です」
「北条沙都子と申しますわ。宜しくお願いします、ですわ」
大仰にぺこりと頭を下げる沙都子。
さわと後ろ髪が左右に分かれて、ほっそりとした首筋が顔を出す。
おばさんの足にしがみついていた少女―――美由紀ちゃんは、つられる様にして頭を下げた。
圭一とおばさんはそっと目配せを交わして、微笑んだ。
玄関は扉よりも間口が広く取られていた。
壁には釣り道具や魚拓などが所狭しと並べられている。
圭一は、なるほどね、と一人頷く。
釣り道具を貸し出し、客が釣ってきた魚を調理して食事に出したりするのだろう。
サンダルが沢山出船で揃えられている。
恐らく、岸辺荘の貸しサンダルなのだろう。
「美由紀、お姉ちゃんをお部屋まで案内してくれるかい」
「はい。みーき、頑張る!」
「あ、圭一さん、お荷物、先に私がお部屋にあげて置きますわ」
「おう、頼む」
何処か外とは違ったひんやりした空気の漂う玄関口で、パタパタと元気に駆けていく少女と、早足でその後を付いて行く沙都子を見送った。
いい娘さんだねぇ、などと目配せをしてくるおばさんに苦笑を返して、宿帳に事項を記入していく。
前原、と書こうとして、ピタリと手を止める。
おばさんと目が合った。
北条と書いて続きを書いていく。さらさらと。
料金の支払い方法を前払いで囲んで、おばさんに宿帳を手渡す。
その内容をちらと見ながら、何でもなさそうにおばさんが声をかけてきた。
「何か訳ありなのかい」
「そんなものじゃないですよ。迷惑は―――かけないです」
「明日まで、かい。朝ご飯は食べるんだね」
「はい」
「家、だと思って泊まって行ったらいいよ。うちはそういうところだからね」
「はぁ」
財布から提示された額を取り出して、手渡す。
「それじゃ、お風呂を案内しようかね。お客さん用の所は閉まっているから。申し訳ないけど家族用だねぇ」
のっしのっしと廊下を歩き出したおばさんの後についていく。
そして気づく、ああそうか、ありがたい事なんだなと。
場違いなコートを脱いで、左手にかける。
ここだよ、とおばさんの指差す扉をくぐって、浴室を見る。電灯のスイッチを入れる。
青いタイル張りでいかにも家族用といった体裁だが、シャワーが海水浴場のそれの様に付いた、結構な広さのある風呂場だった。
チラリと見回してから、風呂場から出る。
なにやらごそごそと紙袋をあさっていたおばさんから、何かを手渡される。
「ほら、これも使いなさいな。サービスしておくから」
「あ、洗面用具。・・・申し訳ありません」
「圭一さんは、家ではそんな事言わないでしょう。気にしない気にしない」
「ありがとうございます」
二つの石鹸と、一つのシャンプーボトルを手に持つ。
タオルはかけてあるものを使えばいいから、と言われて、階段の上へ行くよう促される。
よく磨きこまれた、黒々とした床板を踏みしめながら、靴下を隔てて感じる冷たさに驚く。
螺旋状に階上へと続く階段を上る。
ひんやりとした中にも、何処か懐かしくなる様な空気を感じ取っていた。
雛見沢の実家に似ている、いや、どちらかと言えば魅音の家か。
今頃はどうしているだろうかとそんな事を何となく考えながら、上る。
最後の一段を踏むと、向こうから沙都子と美由紀ちゃんが手を繋いで歩いてきた。
「ん、どうしたんだ。もう仲良くなったのか」
「ほほほ。圭一さんとは違いますもの。美由紀ちゃんとはもう仲良しですわー。ね」
「うん」
ほほほと上機嫌な沙都子。
どうやら何か感じるところがあったようだ。その空いた手には着替えらしきものが抱えられていた。
「あ、沙都子、風呂は、」
「美由紀ちゃんと一緒に入りますわ」
「・・・マジ?」
「ええ」
もうべったりになった美由紀ちゃんを甘えんぼだとあやしながら、沙都子はそんな事を言う。
さすがに呆れるしかない。
沙都子に石鹸とシャンプーを手渡す。
そして、何となくにかっと笑ってみるが、ささっと沙都子の後ろに隠れる少女。
不気味なんですわ、と言われて、ぺちんと頬を叩かれた。
「てってめぇ!!」
「きゃー! 逃げろですわー。ほほほ、圭一さん、お風呂を覗いたら通報しますわよ」
「にげよー」
ぱたぱたと元気よく階段を下りていく元気印の女の子達―――。
ふーと息を吐いて、部屋へ入る。
8畳くらいの畳間から、襖で隔てられた洋室が見える。電気は付けたままにされていた。
畳間と襖の境目辺り。
ポツンと置いてあるちゃぶ台の上に、ほこほこと湯気の立つ湯飲みが置いてある。
「ったく」
どさりと畳の上に腰を下ろす。
そっと手を伸ばして、程よい熱さを感じた。
視線を転じて、窓がある事に気づく。
ちょうど湾に面した窓で。
大きな月と、月に照らされる広く黒い海、白く視界を横切るように長く伸びた橋が見えた。
「いいところ、だな」
一口茶をすすってから、窓を開けるために立ち上がった。
続きます。 2008/3/25 精神年齢www年上のお姉さんに大人って言われたのと。
ひなたんが精神年齢についてぽろっと漏らしたのと。
暇だしやってみようと思った俺は。
まだ若いつもりだったんだ。
鑑定結果 あなたの精神はかなり『中年』です。一人前の大人です。威厳が感じられるようになってきましたが、寄る年波のせいで今まで絶対しなかった失敗や間違いをしてしまい、自信喪失してしまうかもしれません。失敗してもそれは歳のせいですのであまり落ち込まないように。 実際の年齢との差27歳 あなたは実際の年齢よりかなり大人です。周りの人からもよいお父(母)さん役として親しまれていることでしょう。ただ、同年代の人とはしばしば話があわなくなったりしてしまうでしょう。 幼稚度32% あなたは小学校高学年並みの幼稚さを持っています。なんだかんだいってもまだまだ子供です。 大人度68% あなたはなかなかたいした大人です。精神もかなり発達しています。 ご老人度64% あなたは70歳のご老人なみにおじいちゃん(おばあちゃん)っぽさがあります。こうなったからにはのんびり人生を楽しみましょう。 あなたとお友達になれそうな人 総合的な精神年齢を詳しく見てみると、幼稚度、大人度、ご老人度にわけることができます。例えば、幼稚度と大人度がともに高かったりすることがあります。これは、幼さも持ち合わせていてしかも大人っぽい一面もある人、ということになります。精神年齢は年寄りなのに幼稚度が高いということもあります。これは頑固でワガママなおじいちゃんに当てはまります。大人度は高ければ高いほどよく、逆にご老人度は低ければ低いほどよく、幼稚度は15%前後なのが、活発で頼りになる理想的な人です。 星一徹はねぇよ・・・。 これってどんくらいあたるんだろうか。サンプルが多かったら分かるかも。機微さんはお年寄りじゃないつもりだったんだが・・・。あんま嬉しくない。 よって、貴方も試してみてください。みんな親父やおばあちゃんならいいよ!!!!!!1111 http://www.ryu2world.com/seiframe.html
あなたの精神年齢はこんな感じ!
あなたの精神年齢は【14歳】ぐらいで【厨房】レベルです。 どうもあなたには、まだまだ未熟なところがあるようです。 今のあなたに必要なもの先行きの判断力を養うために旅行プランや遊びの計画などを立ててみましょう
何だただの厨房かwwwwwwwww 心配してそんしたwww http://goisu.net/cgi-bin/psychology/psychology.cgi?menu=c033 心に刻むこと4「何を云ってるんだ。誰の子でもない。あれはお前の子じゃないか。殴られたくらいで驚いてンじゃねえ。いいか村上、信用するってのはな、相手に期待することじゃないんだぞ。俺の息子だからこうあって欲しいとか、こうでなくちゃいかんとか、うちの子に限ってそんな事はしないとか、そういうのは信用とは云わない。信用ってのはお前、相手に求めるモノじゃねえだろう」
それはそうだろう。
しかし―――。
「殴られて腹が立ったら怒れよ。悲しかったら泣けばいいじゃないか。恥ずかしいことなんか無い。親子なんだからな」
「俺たちは――本当の――親子じゃない」
「親子に本当も嘘もあるか!」
有馬は大声を出した。
「一緒に暮らしててめえで育ててんだろ。ならお前が親だ。お前以外に親はいねえよ。ぼやぼやしてるンじゃねえぞ村上――」
有馬は扇子を閉じた。
「――親父の威厳がどうしたの、母親の情けがどうしたの、そう云うくだらねえモノに拘ってるから駄目になるんだよ。親父は別に偉かない。母親だって優しいばかりじゃない。子供だっていい子ばかりじゃないぞ。俺達はみんな馬鹿だ。馬鹿が寄って暮らしてるんじゃないか。それだけだ。そ――それだけのことだ」
(京極夏彦/塗仏の宴 宴の始末)
文の流れが無いと浮くねって言う。 2008/3/22 AAいいか、みんな (゚д゚ ) (| y |) 小五と穴とエロでは単なる変態だが 穴 小五 ( ゚д゚) エロ \/| y |\/ 三つ合わされば最強の戦士へと変化する ヘ丶ヽ ヽ\ヾヽソ ゞミ ゚д゚) 悟空 (\/\/ 2008/3/20 心に刻むこと3When we talk about intelligence, we do not mean the ability to get a good score on a certain kind of test, or even the ability to do well in school; these are at best only indicators of something larger, deeper, and far more important.
By intelligence we mean a style of life, a way of behaving in various situations, and particularly in new, strange, and perplexing situations.
The true test of intelligence is not how much we know how to do, but how we behave when we do not know what to do.
The intelligence person young or old, meeting a new situation or problem, opens himself up to it, he tries to take in with mind and senses everything he can about it; he thinks about it, instead of about himself or what it might cause to happen to him; he deals with it boldly,imaginatively,resourcefully,and if not confidently at least hopefully; if he fails to master it, he looks without shame or fear at his mistakes and learns what he can from them.
This is intelligence.
Clearly its roots lie in a certain fooling about life, and one's self with respect to life.
Just as clearly, unintelligence is not what most psychologists seem to suppose, the same thing as intelligence only less of it.
It is an entirely different style of behavior, arising out of an entirely different set of attitudes.
Years of watching and comparing bright children and the notbright, or less bright, have shown that they are very different kinds of people.
The bright child is curious about life and reality, eager to get in touch with it, embraceit, unite himself with it.
There is no wall, no barrier between him and life.
The dull child is far less curious, far less interested in what goes on and what is real, more inclined to live in worlds of fantasy.
The bright child likes to experiment, to try things out.
He lives by the rule that there is more than one way to skin a cat.
If he cannot do something one way, he wil try another.
The dull child is usually afraid to try at all.
It takes a good deal of urging to get him to try even once; if that try fails, he is through.
(Jhon Holt.)
てけとーに訳。間違ってても笑わないように。
上のはコピペだよ。どっからかは忘れた。メモ帳に残ってたので。
参考書か問題集で半分くらい見た気がするけど、手元に無かった。
知能というとき、我々が意味するのは、ある種のテストでよい点を取る能力でもなければ、学校でよい成績を取る能力でさえも無い。
これらはせいぜい、より大きく、より深く、はるかにもっと重要な、あるものの指標(見当付けるための目印)にすぎない。
知能という言葉で我々が意味するのは、ある生活の様式であり、さまざまな状況、とりわけ新しく今までに経験したことの無い、戸惑うような状況に際したときの行動の仕方である。
知能を測る真の尺度は、どれだけ多くのことのやり方を知っているかではなく、何をなすべきか分からないときに、いかに行動するかということである。
(≒確立された対処法に関する知識の有無ではなく、未知の状況に遭遇したとき、いかに対処するかこそが、知能を測る真の尺度である。)
知能の優れた人は、年齢を問わず、新しい状況や問題に直面したとき、自分を全開にしてそれに対処する。
(我々のいう知能の優れた人は、老若を問わず、新しい状況や問題に直面したとき、全力を尽くしてそれに対処する。)
頭脳と感覚とを働かせ、それについて理解できる全てのことを理解しようとする。
自分自身のことや、その状況や問題が元で自分に起こるかも知れない事について考えるのではなく、その状況や問題そのものについて考える。
大胆に想像を働かせ、臨機応変に、そして自信満々にではなくとも、少なくとも希望を抱いて、それに対処する。
もしそれを克服できなくとも、恥じたり恐れたりすること無く自分の誤りを直視し、その誤りから出来るだけのものを学ぶ。
これがすなわち知能なのである。
明らかに、この知能は、人生と人生に関わる自分自身についてのある感じ方に根ざしている。
また同様に明らかに、知能が低いという事は、大抵の心理学者が考えているように思われるもの、つまり知能と同じものであるが、ただその量が少ないというだけのものではない。
(また同様に明らかに、知能が低いという事は、知能の量が少ないというだけのものではない。ここで言う知能とは、大抵の心理学者が考えているようなものではあるが。)
知能が低いという事は(知能が高いということとは)、全く異なった心的態度から生まれる、全く異なった行動様式なのである。
利発な子供と、利発でない、もしくはあまり利発でない子供を長年にわたって観察し、比較した結果分かったことは、彼らは非常に異なった種類の人間であるということである。
利発な子供は、人生と現実に対する好奇心にとみ、熱心にそれと接触し、それを抱きしめ、それと一つになろうとする。
利発な子供とその人生との間には、壁も無ければ障壁も無い。
利発でない子供は好奇心がはるかに乏しく、周囲の出来事や現実に対する関心がはるかに少なく、それよりも空想の世界に生きようとする傾向が強い。
利発な子供は試みにやってみることを、物事を試してみることを好み、物事には色々なやり方があるという原則に従って生きる。
あるやり方で何かをすることが出来なければ、別のやり方で試みようとする。
普通、利発で無い子供は、そもそも試みることを恐れる。
一度でも試みさせるためには、よほど強く勧めなければならず、その試みが失敗すれば、それっきりになってしまう。
(じょん)
まぁ価値観は一様では無いけどね。 2008/3/19 心に刻むこと2日本人ほど本をよく読む人々は、世界の中でも珍しいのではないかと思う。
それなのに、自分の意見や、物の見方、考え方が鍛えられていず、はっきりとした明確な立場を持つに至らない。
たいていの場合、無意見なのである。
本をよく読むという習慣は、多分、日本における『物知り崇拝』の伝統に関係しているのであろう。
物知りをよしとする考えが根強い事は、TV番組に見られる知識を競い合う習慣を見るだけでもはっきりと分かることである。
単なる知識が、その人の創造力とは関係なく、全然といっていいほど役立たない事は、明らかである。
知識を尊ぶという性向は、『論より証拠』とか、『みればわかる』という言葉に潜んでいる『論』否定の立場と、明らかに密接に結びついているのである。
日本人の創造力の伸長に当たって大事な事は、知よりも論理を尊重する習慣を身につけることにあると思う。
『論より証拠』を尊しとする世界では、言葉はあまり大事な役割を持たせてもらえない。
この世界をもっと強い意味で言い表すものが『以心伝心』という言葉である。
ここでは、言葉は無用の長物に化してしまう。
人の心、つまり、考えや意見は、言葉なしで、正しく他人に伝えられるものだという思想が、この言葉の中には含まれている。
ところで、どうして、このような言葉なしの意思疎通が可能となるというのだろうか。
言葉なしで、自分のものの見方、考え方が正しく伝えられるものなら、何も苦労して言葉と論理について、一生懸命努力して学ぶ必要など無くなってしまう。
しかし、言葉なしでこんな事が可能だとするためには、自分と他人のよって立つ文化的基盤、もっと原始的には、精神的な背景に全然違いがない、という確信がなければならない。
こんなところでしか、以心伝心の機能は働かないからである。
従って、私たち一人ひとりの個人としての独立と、言葉による論理的思考がすっかり捨象されていることが、この世界では暗黙のうちに前提とされている。
この前提があって初めて、この世界は成り立つのである。
しかしながら、ここでは、厳密な意味での相互の理解は、犠牲にされているのである。
もちろんアメリカでも、相互に良く知り合った者同士の間では、かなり言葉が省かれた会話も聞かれるが、こういうことはむしろ例外というべきであろう。
例えば、料理の本を見ると、日本ならば『何々を小さじ少々』というところを、アメリカなどでは『小さじ三分の一』という風に表現しているのである。
『小さじ少々』では、どれくらいか危なっかしくて、彼らには全然意味を成さないのである。
日本では、以心伝心の世界が幅をきかし、言葉による論理的思考の世界から、人々を遠ざけるように作用している。
ところが、ヨーロッパやアメリカでは、人々はみな、個人個人が百パーセント違っているのだという人間観を持っているから、非常に親しい人たちの間でさえ、自分の考えていることが、言葉なしで皮膚感覚的に、正しく伝えられるなどとは考えていない。
この事情は、夫婦や親子の間でさえ成り立つ。
個人の独立ということがはっきり確立している人たちの間では、夫婦の間でも、お互い人間として全く異なる個人であることが認識されている。
しかしながら、こうした人間観を持つ人々の間でも、言葉は必要悪であると考えられているように見える。
言葉は不完全で、自分の考えていることを正しく他人に伝える事はできないと考えられているからである。
誰だって、言葉を使わずに相互に意思疎通が出来れば、こんな便利なことは無い。
彼らもそう考えている。
だが、一人ひとりが完全に違った世界に住むと考えられている国々では、人と人の間を繋ぐコミュニケーションの手段は、言葉以外には無いのである。
『さわる』とか『触れる』という手段もあるが、これでは、有効度に限りがあるので、言葉に頼らざるを得ないのである。
そこから、言葉を大事にし、それに明晰性、論理性を求めるという考え方が出てくる。
つまり、彼らにとっては、言葉は必要悪だが、これなしには、論理的に事柄が全然運ばないのである。
此処のところに、言葉を大切に育てて体系化し、曖昧さを残さないような表現の仕方を工夫していくという動きが出てくる。
こういう面から日本語を眺めると、日本人ほど自国語を大事にしない人々は、世界でも少ないのでは無いかとすら思えてくる。
外国語にコンプレックスを持ち、日本語が非論理的だとか、種種の表現に適さないなどと悪口を言う人達が後から後から出てくる理由は、言葉こそコミュニケーションの最も重要な機能を果たすものであるという認識が欠けているからに違いない。
このような基盤から、何処の国の言葉だか分からないような珍語、新語が、次々と作り出されてくるのである。
自国語に対する誇りがもてなければ、言葉は悪くなっていく一方である。
日本語をフランス語にしようなどという運動がかつてあったと聞くが、日本人の心情が変わらない限り、国語が変わっても、やがてまた、それが悪いものになってしまうだろう。
要は、以心伝心をよしとする考え方から、私たちが抜け出ることにあるのである。
そこから、さらには、感覚的思考から離れていく基盤が、生まれてくるはずだからである。
(九州大学) AA ノ L ___
⌒ \ /\ / (●) (●)\ / (__人__) \ 何見よんか! | |::::::::| | きさーん!!! \ `⌒´ / \ ,,,, ,,, / ____ ./:::::::::::::\ ./::ヽ‐、 / \ /:::::,::::::::::::::| |::::::| ::i / _ノ '' 'ー \ ./:::::::| :::::::::::::::| |::::::| ::i / (●) (●) \ i::::::/ i::::::::::::::::| |:::::」 ::i | (__人__) | なめとんのかい!! i::::::i ^| ̄ ̄ ^|ノ :/ \ ` ⌒´ / .ヽ:::ヽ /三三三三)/ ./⌒ ヽ, \_):::::::::::::::::::::::::| ./ /、 。 。 r \ .〈::::: ノ::::::| ::::::::| .(_ ̄ ̄\' |) .) /:::::::::::::::::::| :::::::::| /⌒ヽJ三三三三三/ / .i::::::::::::::::::::::| :::::::::| /:::::::::::::::::::;;; ::::::::::::::::::::: し^⌒ヽ .i::::::::::::::::::::ノ ::::::::ノ ./::::::::::::::::::::ノ::::::::::::::::::::: 、:::::::::::::::.) .|:::::::::::::/ \::::::/ .|:::::::::::::::::::::|ヽ、::::::::,,:::::ノi:::::::::::::::/ .ヽ::::/ ヽ:::|__ i::::::::::::::::::ノ  ̄^ ̄ \:::::::/ .ノ.^/ ヽ、_ ヽ,::::::::/ .ヽ、__つ 久し振りにガチで吹いたwwwwwwwww
きさんって言うよね北九州の人。かわゆす。
====================================================== |
======================== ∧ ======== ∧=============== \\ /// ====================== / λ====== / λ=========== \ / ==================== / λ==== / λ======== \ 抱 / ================== \======== \ ッ / ================= ● ● λ \ コ / ================ \|/ 、 | / ♪ \ ================ /|\  ̄ ̄ ̄ ̄ | // \ ================= / / \ ================== / | ================  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ>  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〇> + ============== |> 〇> ============ _______ ノ> _______〇> ========== /============= ======== /============= ====== /================ ==== /=========== フアァァァ
∧_∧____ ネムクナッチャッタ /(*´o`) ./\ /| ̄∪∪ ̄|\/ |_しー__|/ ∧_∧____ ネヨウ /(*゚-゚) ./\ /| ̄〇〇 ̄|\/ |_しー__|/ ______ オヤスミナサイ,,, /∧ ∧/)./\ /| ̄ ̄ ̄ ̄|\/ |_しー__|/ パタン ____ミ / / /| | ̄ ̄ ̄ ̄|. | | しー |/ しーかわゆすwwwww妹思い出した。
ひなたんにはあげないんだから! 2008/3/11 WEB拍手レスなんだよ!なんといいましょうか、夢の中でやってしまった経験は無いでしょうか。
朝―――まどろみつつ今日の予定を反芻する。
柔らかな布団の胸に包まれて、ふっと意識を失う。
その時に朝ごはんを食べてしまっていたり、学校に行く準備を済ませていたり。
そういうときには大抵昼前に腹がなったり授業前に教科書がないことに気づいたりするんです。
ええ、WEB拍手レスしたつもりでしたがしてませんでした。
申し訳ありません(><;)
最近やたらとスネをあちこちにぶつけたり蹴られたりするんですが呪いですか?
スネを庇おうと思ったら股関節が痛くなったゆ。なんぞこれ。自業自得。
そうですね。
WEB拍手で感想をくれた勇者がおる!!機微さん感動した!
というわけでレスでも。
2/9
>16:54 いちご面白いですwBTLさんも、機微さんも、できれば長く続けてくださいっ!!応援してますー!!vv
応援どうもありがとうございます!
ちょっとはっちゃけ気味なのもありましたが、BTL師匠のお力で何とか読める体裁に(汗
メッセでは大抵あんなことやってますww
きっかけさえあればささっとかけてしまうタイプなので、こんなのが見てみたい!ってのがあれば遠慮なくどうぞ。
ネタがあればすぐです!
2/10
>11:45 ちょっwこれ良いwwこんな苺がもっと欲しいです
どんなイチゴかkwskwwwwwwwwwwwwwww
感想ありがとうございますー。最近怠け気味ですイチゴ。というかメッセ自体なかなかやってないって言う。
ごめんなさいね、兄貴たちから起爆剤を貰ったらすぐに妄想してしまうんですが・・・。
次回作をお待ちくださいませ!
>11:53 魅ぃちゃんがバレンタインでどぎまぎして良い雰囲気になって何かあっちゃう話が読みたいです先生(土下座)
先生だなんてとんでもない(によによ
バレンタインSSは書いたんですが、お気に召しましたでしょうか?(どきどき
リクエストなどあれば、遠慮せずいつでもどうぞ。応えられる内容であり、時間があれば即書きます。
やる気を倍増させるコメントありがとうございましたー。
2/15
>7:32 凄く自然な話で驚きました。続きも楽しみにしています
感想どうもありがとうございます!
時期的に魅音のバレンタインSSの感想でしょうか。
MSNのブログサーバーが落ちてしまっていたようで、当日にアップできなかったのが心残りですが、書きたかった事はほとんど書きました!
自然な話といっていただけると嬉しいです!
3/6
>21:14 圭一と沙都子の微妙な雰囲気にものすごくときめきました。こういう空気大好きです。
>21:15 あんまりにもときめきすぎてしばらくキュンキュンしそうです。続き楽しみにしております!(和泉)
感想ありがとうございますっ!
つながり。への感想でしょうね、嬉しいです。
お久し振りですー。最近は何もないのに忙しくてSS読めてません(笑)
また沙都子分が足りなくなったらお邪魔しますね。
きゅんきゅんとは・・・!恐れ多い感じです。もう少し長く続くので、まったりお待ちくださいませ。
期待にそえるよう頑張ります!
3/8
>18:34 拝見しました。いや、流石ですね。……ところでこれは圭沙っすか?圭魅っすか?いや、圭一の心情的なのは
感想ありがとうございますです!
さすがの続きが気になります(笑)巷ではエロイ人で通ってるのでどうにも。
さー、御質問ですが、今のところは曖昧ですよね。そのつもりで書いています。
もう少し読み進めるとおのずと分かってくると思いまする。
気長にまったりお読みくださいませ。
以上です!
書いたけど返事ないって方がいらっしゃいましたら↓からどうぞ。罵ってやってください。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|